イノベーションマネジメント株式会社は、企業の継続的なイノベーションを支援いたします。戦略的な事業の仕組みを構築し、多くの実績を活かしたプロジェクトマネジメントシステムをご提供します。

Column

新着:第23回 リーダーシップ(後編)

パワーへの理解

組織において、人は多くの依存関係に組み込まれて仕事をしている。企画、研究、開発、営業、製造などの上流部門と下流部門の関係や上司と部下の関係も依存関係の中の一つの形にしかすぎず、人は複雑に絡み合った依存関係の中で仕事をすることを避けられない。この複雑な依存関係の中で自分以外の人達を動かせないと結果は出せず、その人を動かす力のことをパワーと呼ぶ。依存関係の世界の中で分かっていることは、残念ながらほとんどの人の持つフォーマルなパワーは限られていることである。唯一、社長だけは絶対的なフォーマルなパワーを持っており、依存関係の世界でもフォーマルなパワーで人を動かすことができるが、その他の人のフォーマルなパワーは限られており、インフォーマルなパワーを駆使できなければ依存関係の世界で成果を出すことは難しい。依存関係の世界で必要とするパワーを理解し、このパワーの使い方を理解したものが成果を出すことができるのである。

ソフトパワーとハードパワー

では、パワーにはどのようなものが存在するのであろうか。
下図で底辺に記載されているものはフォーマルなパワーであり、ハードパワーと呼ばれる。これらのハードパワーはある意味では強制的に人を動かす力を持っており、マネジメント力の源泉でもある。しかし、これらのパワーは言い方を変えれば劇薬であり、使い方を間違えると毒にもなりかねない。これは、このパワーを使われた立場から考えればよくわかる。自分としてはやるべきではないと思っている仕事を上司に進言したのにもかかわらず、十分議論もさせてもらえないなかで、半ば強制的に実施するよう指示された場合、人は喜んでその仕事をするであろうか。逆らえば、当然評価は下がり自分の社内での立場も危うくなることは目に見えている。いやいやでも、不満を抱えながらでもやるしかないという場合でこのパワーを駆使された人は、駆使した人をどのように思うであろうか?
 このようなパワーの使い方はお互いの人間関係を崩す危うさも秘めている。ハードパワーは必要なパワーであることは間違いないが、使い方はよく考えなくてはならない。持った刀はそれだけで、人を恐れさせる力がある。持った刀をやたら振り回すのは、狂人の沙汰であると言えよう。

では、フォーマルなパワーに対してインフォーマルなパワーとしてどのようなパワーがあるだろうか。図に示すように、知的パワーと呼ばれるその人が身に付けた専門性や情報、人間関係など知的なパワーが源泉となって、相手を動かす力となりえるものや、その人の人間性に起因して尊敬をあつめ、その人的パワーによって人が動くものなどがある。これらのパワーはソフトパワーと呼ばれ、ハードパワーと同じように人を動かす力を持っている。しかも、インフォーマルなパワーがゆえに、組織の権限構造を超えて人を動かす力となる。また、このソフトパワーの特徴は、いくらこのパワーを駆使しても駆使された側には全く不満が起きないことである。なぜなら、ソフトパワーは相手に働きかけるが、動く場合は相手の意思決定で動くという特徴をもっており強制力で動かすハードパワーのメカニズムとは全く違った作用メカニズムをもっているからである。依存関係の中での理想の人の動かし方は、ハードパワーを持ってもハードパワーをなるべく使わず、できるだけソフトパワーを使って動かすことである。
 また、別な見方をすればハードパワーは借り物のパワーであり、自分自身が獲得したものではない。フォーマルなパワーがゆえに、その組織を離れるとパワーは全て失う。一方、ソフトパワーは自分が会得したパワーであり、借り物ではない。ゆえに、その組織を離れても自分に帰属し、一生自分で使える真のパワーと言えよう。だが、ソフトパワーを得るためには相当の努力や勉強が必要であり、関単に獲得出るものでもないことは付け加えておきたい。

人を動かすカレンシーへの理解

個人から見た場合の理想の組織とは、何か自分が困ったことがあれば組織階層関係なく必要な人に気楽に相談でき、必要な支援をしてもらうことができる組織であろうが、残念ながら多くの組織を見てきたがそんな組織は、特に大企業ではほとんど存在していない。どちらかというと、相談して動いて欲しい人はわかっているが、そう簡単に動いてくれそうもなく、下手をすれば怒られるだけで何もしてくれないので相談する気も起らないという組織の方が多い。しかし、成果を出すには依存関係の中で人を動かさなくてはならないという事実が歴然と存在している中で、その動いてくれない人をどうやって動かせるかは重要なテーマでもある。優秀な営業マンは売るべき人に会いに行くが、ダメな営業マンは会いやすい人に会いに行くといわれるように、例え動いてくれそうにない人かもしれないが、その人がキーパーソンであれば会って動かさなくてはならないこともある。
 そのとき、使える考え方として「カレンシー」とい言葉である。日本語で言えば通貨であり、人を動かすために代金である。孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の言葉にあるように、彼を知らなければカレンシーは役立たない。通貨には様々な通貨があるように自分にとっては価値ある通貨であるが、相手にとっては価値のない通貨だってあり得る。相手に使える通貨とは何か、彼を知らなければわからない。そのためには、深く観察し、相手を理解し使える通貨を特定し相手に対して動いてもらう準備をしておく必要がある。それが、情報提供でできるのか、相手の困りごとを手伝うことなのか、価値ある提案を持っていくのか、相手に応じて必要な準備をすることが必要となる。その準備をして相手が動いてくれる環境を作ることがカレンシーの利用である。多くの場合、動かせないのではなく、自分で動いてくれないと思い込んでいる方が多い。用意周到準備して、動く環境を作ることこそが重要である。

プロジェクトにおけるリーダーシップ

プロジェクトにおいてリーダーシップは誰が発揮すべきものなのか? 当然、プロジェクトマネジャーはリーダーシップを発揮することが求められるが、プロジェクトがチームで動いている以上リーダーシップはプロジェクトチームの誰もが発揮することが求められる。プロジェクトは状況が常に変化するものであり、予定通りにすべてが進むことを期待しない方が良い。状況が変われば、それを認識するのはプロジェクトマネジャーの仕事でもあるがプロジェクトマネジャーが全ての変化を認識することは容易ではない。当然見落としもあるだろうし、情報が入ってこないこともある。その結果、意思決定の判断が遅れプロジェクトの状況が悪化することも有りうる話である。実際のところ、状況の変化を最初に察知する可能性が最も高いのは現場で動いているプロジェクトチームメンバーの誰かであろう。そのプロジェクトメンバーの動きによってプロジェクトにおけるアクションが変わってくる。プロジェクトメンバーが状況の変化を察知しプロジェクトの影響がでると判断すれば自ら動いて対応を取ることが理想である。必要であれば関係する他のプロジェクトメンバーを動かしたり、プロジェクトマネジャーに対応策を進言したり問題解決に自ら動くことが理想の行動である。これこそがリーダーシップであり、現場を任されたプロジェクトチームメンバーにもリーダーシシップが欠かせないのである。サッカーのチームを見ればリーダーシップの必要性がよくわかる。全体の試合を指揮する司令塔(プロジェクトマネジャー)は必要であろうが相手のある試合で思うとおりのサッカーがなかなかできるものではない。その中で一瞬のチャンスを見つけゴールを奪うには、その場その場で各選手が自ら判断し、チームメンバーを阿吽の呼吸で動かし、ボールを素早くパスしてシュートにつなげる必要がある。つまり、チャンスを見つけたプレイヤー(プロジェクトメンバー)が自ら判断を行いチームメイト(プロジェクトマネジャーを含めた他のプロジェクトメンバー)を動かしゴールを奪う行為こそリーダーシップの一つの形であり、チームが勝つための必要な要素なのである。

リーダーシップ環境の整備

 リーダーシップは発揮しろと言われてもすぐに発揮できるものでもない。リーダーシップはある意味では個人が過去の経験の中で培ったものであり、個人の人格的な要素の一面を持つ。大組織で上司の指示で動くことに慣れた人が、今からリーダーだと言われてリーダーシップが発揮できるかというと、そう簡単な話ではない。上司から言われたことで動くという習慣が染みついてしまい、その逆の行動である自分で考え判断し行動するという行為が上手くできなくなる。つまり、経験したことのない行動を強要することに等しいのである。上司の指示で動くことに慣れた組織環境は、残念ながらリーダーシップを発揮できにくい環境だともいえる。リーダーシップを発揮しているのは、その組織を率いているマネジャーであり、他はフォロワーシップばかりが身についてしまう。誰もがリーダーシップを発揮できるようにしないと、プロジェクトチームはリーダーシップ不在のチームになりかねず、プロジェクトの成功は危うい。プロジェクトチームにリーダーシップが必要なのであれば、常日頃からプロジェクトメンバーになる可能性がある人たちはリーダーシップを発揮する訓練をしておかなくてならない。これは組織運営や企業カルチャーにも関係することであるが、プロジェクトで動くことが益々増えていく今日の環境においては、若い時から自ら考えて判断し行動できる人材を育成することを組織の育成方針として明確にし、人材を鍛えていくことがこれからの企業では益々必要となる。特に、昨今は企業内だけのプロジェクトでは収まらず、他企業との共同のプロジェクトも増える傾向にある。そのようなプロジェクト環境では他社のチームメンバーを動かせなければ成果も出せないが、マネジメントの持つハードパワーはほとんど機能しない。唯一機能するものがフォーマリティ―を超えた影響力を持つリーダーシップであるが、そのリーダーシップを発揮する力がなければ誰も思い通りに動いてくれないことになってしう。より、グローバル化が進み、オープンイノベーション環境が進んだ今日にはリーダーシップは欠かせない重要なコンピテンシ―であり企業も意識してリーダーシップを発揮できる人材を育成していかなくてはならない。